【最大600万円、申請できるのは実質1ヶ月弱】最低賃金1,176円時代の「業務改善助成金」が9月始動──AIで賃上げの原資をつくる中小企業の5つの実務

AI・DX 2026年8月17日 / TANAKAMASATO

「うちは賃上げしたくても、その原資がない」
「補助金は書類が大変で、結局手が出せない」

そう感じている経営者は多いはずです。ですが2026年7月28日、厚生労働省の中央最低賃金審議会は令和8年度の最低賃金引き上げ目安を、全国加重平均55円・1,176円と答申しました。東京都はすでに8月5日、目安どおり54円引き上げの1,280円(10月1日発効予定)で答申を出しています。

「賃上げは義務、原資は自分でどうにかしろ」という時代は終わりつつあります。国は「賃上げ+生産性向上投資」をセットで支援する「業務改善助成金」を、9月1日から令和8年度版として再始動させます。しかも対象経費にはAI-OCRやAIチャットボットなど、ChatGPTやClaude、Geminiと組み合わせて使うAIツールも含まれ得ます。「賃上げの原資をAI投資でつくる」という選択肢が、この秋から現実的になります。

本記事では、何が変わったのか、中小企業がどう動けばいいのかを5つの実務に整理します。

1. 何が起きたか──最低賃金が1,176円へ、東京は1,280円に

結論:全国平均は前年度比55円増の1,176円、東京は10月1日に1,280円へ改定される見込みです。

厚労省の中央最低賃金審議会は7月28日、令和8年度の地域別最低賃金の引き上げ目安を全国加重平均1,176円(前年度1,121円から55円増)と答申しました。引き上げ幅は前年度の66円から縮小したものの、依然として過去2番目の大きさです。今回はA・B・Cランクの目安がそれぞれ54円・56円・56円と、地方(B・Cランク)の方が大都市圏(Aランク)より高く設定されているのも特徴です。

東京都の地方最低賃金審議会はすでに8月5日、目安どおり54円引き上げの1,280円(現行1,226円)で答申しており、発効は10月1日を予定しています。発効日は都道府県ごとに異なり、審議が長引く地域では11月にずれ込む可能性もあります。自社が所在する都道府県の労働局発表を個別に確認しておく必要があります。

2. 業務改善助成金が「別制度」として9月に再始動

結論:令和8年度は制度設計そのものが変わりました。旧年度の資料をそのまま使うと数字がずれます。

業務改善助成金は、事業場内最低賃金を一定額引き上げつつ、生産性向上に資する設備・システムを導入する中小企業に、費用の一部を助成する厚労省の制度です。令和8年度は以下の点が変わりました。

  • コース区分:旧年度の「30円・45円・60円・90円」の4コースを廃止し、「50円・70円・90円」の3コースに再編
  • 助成率区分の基準額:引上げ前の事業場内最低賃金が「1,000円未満/以上」から「1,050円未満/以上」に見直し(未満なら助成率4/5、以上なら3/4)
  • 助成上限額:10人以上・90円コースで最大600万円(特例事業者)、一般事業者でも450万円
  • 申請受付:9月1日開始(旧年度は4月開始だったため注意)

特例事業者(事業場内最低賃金1,050円未満、または利益率が前年同期比3ポイント以上低下)は、通常対象外のパソコン・タブレット端末(新規導入分)も助成対象に含まれます。

3. 対象経費にAIツールも含まれる──ChatGPT・Claudeを”計画書づくり”に使う実務

結論:AI-OCRやAIチャットボットは対象経費になり得ます。生成AIは申請書類の下書きにも活用できます。

助成対象になる「生産性向上に資する設備投資等」の範囲は、実は広めです。POSレジ、AI-OCR(帳票・請求書の自動読取)、AIチャットボットによる顧客対応の一部自動化、受発注・在庫管理システムなどが該当し得ます。一方で、単なる汎用パソコンの購入や、既存設備の維持・修繕費は対象外です(特例事業者の端末購入を除く)。

審査で問われるのは「その設備がなぜ生産性向上につながるのか」という因果関係の説明です。ここは生成AIの出番です。ChatGPTやClaude、Geminiに現状の業務フロー(作業時間・人手・ミス率)を整理させ、「導入後にどう変わるか」の仮説を一緒に組み立てることで、事業計画書の説得力を高める下準備ができます。ただしAIが出す試算や制度解釈はそのまま鵜呑みにせず、必ず自社の実データと最新の公募要領で裏を取ることが前提です。最終的な経費の対象可否は、コールセンター(0120-366-440)や管轄労働局への事前確認が欠かせません。

4. 申請期限は実質1ヶ月弱──動くなら今すぐ

結論:申請期限は「地域別最低賃金の発効日の前日」または「11月30日」の早い方。東京なら9月30日までです。

申請受付は9月1日に始まりますが、締切は地域別最低賃金の発効日前日か11月30日のいずれか早い方です。東京都のように10月1日発効の見込みであれば、申請できるのは9月30日まで──実質1ヶ月弱しかありません。しかも交付決定前に設備を発注・契約すると、その経費は助成対象外になります。見積書の取得、GビズIDプライムの取得(電子申請jGrantsに必須、取得まで2〜4週間)、賃金引上げ計画の策定は、8月のうちに終えておくのが現実的です。

5. 他制度との使い分け

賃上げを前提にするかどうかで、選ぶべき制度が変わります。

制度 主目的 賃上げ要件 使い分けの目安
業務改善助成金 最低賃金の引上げ+生産性向上の設備投資 必須(事業場内最賃を50/70/90円引上げ) 賃上げと設備投資を同時に行いたい事業者向け
デジタル化・AI導入補助金2026 ITツール・生成AIツールの導入による業務効率化 年度・枠により変動 賃上げと切り離してAIツールを導入したい場合
人材開発支援助成金(リスキリング等) 従業員のAI・DXスキル研修 なし(研修実施が要件) 設備よりも人材育成を優先する場合

同一経費を複数制度に重複申請して二重に助成を受けることはできません。併用する場合は対象経費を明確に切り分ける必要があります。

まとめ

最低賃金は10月にかけて全国的に上がります。「賃上げの原資がない」で立ち止まる前に、業務改善助成金でAI・IT投資と賃上げをセットにできないか、8月中に自社の対象可否を確認してください。申請できる期間は驚くほど短いです。

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