「前回IT導入補助金を使ったから、手続きは分かっている」「150万円以下の申請なら、賃上げは関係ない」──そう考えているなら、申請前に一度立ち止まってください。
結論から言うと、それは半分しか正しくありません。デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)の事務局は2026年10月9日、「第7次公募回以降」の制度変更を告知しました。通常枠・セキュリティ対策推進枠では、過去に交付決定を受けた会社は申請額が小さくても「1人当たり給与支給総額3.5%以上の向上」が申請要件になります。ChatGPT・Gemini・Claudeなどの生成AIで業務を効率化する流れが進むなか、AI・ITツールへの投資を補助金で後押しする制度も「賃上げとセット」の色が強くなっています。
あわせて10月7日には4次締切分の採択結果も公表され、申請5,398者に対し採択は2,446者でした。本記事では、事務局とミラサポplus(中小企業庁)の一次情報をもとに、申請前に確かめる4つの実務を整理します。
1. 10月9日、事務局が「第7次公募回以降」の制度変更を告知──変更点は3つ
何が起きたか:デジタル化・AI導入補助金事務局は「第7次公募回以降における制度変更のお知らせ」を掲載し、次の3点の変更を告知しました(事務局のお知らせ)。
- 通常枠:令和8年度地域別最低賃金の改定に伴い、補助率引き上げの要件を変更
- 通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)・セキュリティ対策推進枠:「1人当たり給与支給総額(非常勤を含む全従業員)の向上」に係る申請要件を新たに追加
- 同じ3枠:令和8年度地域別最低賃金の改定に伴い、加点項目の要件を変更
実務でどう使うか:事業スケジュールでは、通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠の1次〜6次締切分の締切は2026年10月30日(金)17:00、交付決定日は12月10日(木)予定です。7次締切分の日程は、10月13日時点のスケジュールページには掲載されていません(事業スケジュール)。実務上の考え方としては、まず「6次で出すか、7次に回すか」を決め、どちらの回のルールで準備するのかを社内とITベンダーで揃えることが出発点になります。
2. 「過去に交付決定を受けた会社」は賃上げ3.5%が必須に──セキュリティ対策推進枠も対象
何が起きたか:10月9日作成のセキュリティ対策推進枠の公募要領では、IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者に対し、1年後に1人当たり給与支給総額を3.5%以上向上させ、3年間の事業計画期間の年平均成長率も3.5%以上とする申請要件が設けられました。事業計画終了時点で達成できなかった場合は「補助金の全部の返還を求める場合がある」とされています(付加価値額が増加せず、かつ3年間の過半数で営業利益が赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を求めないとする例外あり)(セキュリティ対策推進枠 公募要領)。
通常枠でも、過去に交付決定を受けた事業者は、申請額150万円未満であっても3.5%以上の向上が申請要件です(通常枠 公募要領)。
リスクと対策:「お助け隊サービスの利用料だけだから小さな申請」と考えていても、過去の交付決定歴があれば3年間の賃上げ計画を背負うことになります。申請前に、①2022〜2025年に交付決定を受けたか(会計・総務の記録で確認)②3年間で3.5%の給与総額アップを無理なく計画できるかの2点を経営判断として確認しておくことが重要です。
3. 申請額150万円が分かれ目──「3%+最低賃金+30円」が必須になる境界線
何が起きたか:通常枠の補助額は5万円〜450万円で、150万円〜450万円以下は4プロセス以上が必要です。150万円以上を申請する交付決定歴のない事業者は、1人当たり給与支給総額の3%以上向上に加え、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にすることが必須です。一方、150万円未満で交付決定歴がなければ、賃上げ計画は加点項目の扱いです(通常枠 公募要領)。
補助率は原則1/2以内ですが、令和7年10月から令和8年9月の間に、地域別最低賃金以上〜令和8年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合は2/3以内に引き上げられます(同公募要領)。
実務でどう使うか:ITベンダーの見積が150万円をまたぐかどうかで、背負う要件が変わります。実務上の考え方としては、「150万円未満に絞る案」と「150万円以上で業務プロセスを広く変える案」の2パターンで見積を取り、賃上げ計画の負担と効果を比べてから決めるのが安全です。賃金台帳の集計やシミュレーションの下書きはChatGPTやClaudeで効率化できますが、個人が特定できる情報は外した集計値で扱いましょう。
4. 4次締切の採択は2,446者/申請5,398者──「半分以上は通らない」前提で計画の精度を上げる
何が起きたか:ミラサポplusが10月7日に公表した4次締切分(複数者連携デジタル化・AI導入枠は2次締切分)の結果は次のとおりです(ミラサポplus 採択結果)。公表された申請数・採択数から算出すると、全体の採択は約45%です。
- 通常枠:申請1,836者 → 採択816者(約44%)
- インボイス枠(インボイス対応類型):申請3,536者 → 採択1,610者(約46%)
- セキュリティ対策推進枠:申請22者 → 採択16者(約73%)
- 複数者連携デジタル化・AI導入枠:申請4者 → 採択4者
実務でどう使うか:通常枠は半分以上が不採択という結果です。実務上の考え方としては、「どの業務の何時間を減らし、その成果をどう賃上げにつなげるか」を数字で書けるかが勝負どころになります。なお、セキュリティ対策推進枠は申請自体が22者と少なく、補助額5万〜150万円、補助率は中小企業1/2以内・小規模事業者2/3以内で、IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」掲載サービスの利用料(最大2年分)が対象です(セキュリティ対策推進枠の概要)。
申請区分別:1人当たり給与支給総額の要件(第7次公募回以降)
| 申請区分 | IT導入補助金2022〜2025の交付決定歴 | 1人当たり給与支給総額(非常勤を含む全従業員)の要件 |
|---|---|---|
| 通常枠:申請額150万円未満 | なし | 必須ではない(賃上げ計画は加点項目) |
| 通常枠:申請額150万円未満 | あり | 必須:1年後に3.5%以上向上、3年間の年平均成長率3.5%以上 |
| 通常枠:申請額150万〜450万円 | なし | 必須:3%以上向上+事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上 |
| 通常枠:申請額150万〜450万円 | あり | 必須:3.5%以上向上(事業場内最低賃金の条件も対象) |
| セキュリティ対策推進枠 | あり | 必須:1年後に3.5%以上向上、3年間の年平均成長率3.5%以上 |
| セキュリティ対策推進枠 | なし | 必須ではない(加点項目として任意で申告) |
※第7次公募回以降の公募要領(2026年10月9日作成)より整理。医療機関・介護サービス事業者・社会福祉事業者・一部の学校等は賃上げ要件の適用外とされています。正確な適用判断は公募要領原文と事務局で確認してください。
まとめ:今週は「交付決定歴」と「150万円の境目」の2点だけ確認する
経営者の行動ポイント:①自社が2022〜2025年に交付決定を受けたかを確認し、②見積が150万円をまたぐかを見たうえで、6次(10月30日17:00締切)で出すか7次に回すかを今週中に決めましょう。
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出典
- デジタル化・AI導入補助金事務局「第7次公募回以降における制度変更のお知らせ」(2026年10月9日)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)(2026年10月9日改定版)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(セキュリティ対策推進枠)(2026年10月9日改定版)
- デジタル化・AI導入補助金事務局「事業スケジュール」
- デジタル化・AI導入補助金事務局「セキュリティ対策推進枠」
- ミラサポplus「【補助金採択結果】デジタル化・AI導入補助金2026の補助事業者を採択」(2026年10月7日)
